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2008年11月13日 (木)

Starless

「Starless」という曲があります。
私がどうしようもなく落ち込んだとき、どうしても聞きたくなる曲です。

King Crimson(キング・クリムゾン)というバンドをご存じでしょうか?
1960年代後半に、ロックやジャズの凄腕ミュージシャン達でバンドを
結成。プログレッシブ・ロックという音楽分野を確立し、
一時的な活動休止はあるものの、今も現役です。

Starlessは、彼らの7作目のスタジオアルバム「Red」の最後を飾る曲です。
この頃の彼らは、当時のロック界で最強と言ってもいいような
メンツで活動していました。
ただ、その彼らをもってしても、当時彼らが目指していた音楽を
作り上げることがどうしてもできない。。。
そんな絶望感が、バンドを率いていたロバート・フリップを
押しつぶそうとしていたようです(他のメンバーはそんな
彼の状況に全く気づいていなかったようですが)。
アルバム「Red」をリリースすると同時に、フリップは
King Crimsonの解散を一方的に宣言。
バンドはその後7年間にわたり、眠りにつきます。

Starlessは、想像を絶するような絶望感に埋め尽くされています。
曲の最初は、静かにフェードインする、哀愁に満ちた

主旋律(主題)が、メロトロンで綴られます。
これほど美しいイントロを聴いたことがない、しばしばそう形容された
美しいイントロです。
やがて、ジョン・ウェットンの憂いに満ちた歌声。
「Sun down dazzling day(眩いばかりの日没の日)」
「Starless and bible black(星ひとつない、聖なる暗黒)」、
イアン・マクドナルドとメル・コリンズの悲しげなサックス。
美しいのに、救いのないほどの孤独感に溢れた夕景を思わせます。
誰かと共に見る美しい夕景ではない。。。

ただ一人、孤独に包まれて見る陰惨な夕景でしょうか。。。

やがて日は暮れ、静かな夜を迎えます。
ウェットンの地の底まで沈み込むような暗いベースラインを追って、
ロバート・フリップの軋むようなギターが、
次第にテンションをあげながら続きます。
子供なら居たたまれず泣き出すような、
鬼気迫る緊張感が、さらに満ちあふれていきます。
星一つない、見渡す限り一片の光明もない漆黒の夜を
一人彷徨い歩く。。。次第に得体の知れない恐怖が
ありとあらゆる方向から忍び寄ってくる。。。

そして、緊張が極限まで達したその瞬間、
サックスが堰を切ったように突然荒れ狂います。
自分を取り囲む全てが突然崩壊し、雪崩をうったように
暴風の中に放り込まれたような、ほぼ錯乱した感覚。

嵐は突然終わりを迎え、前奏で現れた主旋律(主題)が
再び現れます。
ただ、前奏と旋律はほぼ同じなのに、エンディングの主題には
哀愁はそれほど感じられません。
代わりにあるのは、儚く、哀れで、とてつもなく重く、
一切の救いのない圧倒的な絶望感です。
あまりに美しく、あまりに圧倒的なエンディング。

そして、静かでありながら重くフェイドアウトする余韻とともに、
曲は終わりを迎えます。
この余韻からはなぜか、僅かな希望が感じられます。
自分にとって大事なもの全てを引きはがされ、
耐えられる者など誰もいないようなとてつもない絶望に
突き落とされた中で、ただ一つ残った希望。。。。
唯一つ手元に残された自らの命=希望なのかも知れません。。。

漆黒の夜、暴虐の嵐が過ぎ去ると美しい朝日が訪れた。。ではなく
暴虐の嵐が過ぎ去ると、朝日の中、愛する人の亡骸が

横たわっていた。。。。この曲をそう表現した人がいます。
自分の死ではなく、自分の最も大事なものの死。
そこに充満するのは、やはり絶望以外のなにものでもありません。

12分以上もの長さにわたる大曲なのに、全く長さを感じさせない
圧倒的な曲です。

私はどうしようもないほど深く落ち込んだとき、

この曲を大音量で聞きます。
そして、自分が浸っている絶望感の卑小さを徹底的に思い知らされ、
やむなく無言で立ち上がり再びヨロヨロと歩き出す。。。
そんなことがこれまでの人生で何度もありました。

単なる音楽、曲ではない。一種の哲学が具現化したもの
そういっていいかもしれません。

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